カブトムシな大家さん。。。

めずらしく土曜も更新なんじゃんw
さて、昨日予告したこの話。。
土曜日のこんな時間に書いていいものか悩みましたが、書けるだけ書きます。。
この話は4年前。。
世の中にまだ任売の物件がうじゃうじゃあった頃のお話です。。
都内某所(城南地区です)任売扱いの物件を銀行経由で弁護士さんがうちに持ち込んだところから始まります。
本物件は平成元年築のRC4階建て。
土地が300坪くらいあるどこから見ても積算価格が売買価格を激しく上回りそうな物件でした。
(ホント、当時は積算出る物件の宝庫でした。。)
本物件の残債は約4億。。
積算で6億くらいいっちゃいそうな物件だったので最悪、5億で買えればいいやくらいの物件でしたが売主希望価格は48000万。。
敷金が1000万弱あったので銀行フルローン(諸経費含む)でコミコミ5億引っ張れば元手なしで悠々大家さん(登録商標申請中)間違いなしって物件でした。
しかし、、この物件の最大の弱点は駅から徒歩20分ってところ。。
小田急線の駅なのですがこの当時、徒歩20分となるとどこの銀行で融資引っ張ればいいのやらって感じでした。
(当時は駅から15分なんて言うと銀行のテンション、、ダダ下がりの傾向がありました。)
この物件、弁護士さんに売却の理由を聞いたのですが、、、いわゆる競売に掛けられちゃった系物件とのこと。。
持ち主さんはこの辺の地主さんですが、バブル当時、こういう地主さんに寄ってたかってマンション建築の融資をジャブジャブやってた某都銀の犠牲者の一人です。。
昨日も書きましたがこの物件。。賃貸併用のレジです。。
と言っても自己使用分は最上階の部屋だけですから(といっても5LDKなんてふざけた部屋ですけど)賃貸併用住宅ってわけじゃありません。
賃借人さん用とオーナー用の入口が別々でオーナー用エントランスは総大理石で入口奥に鎮座しているミロのビーナスは水ガメからジャバジャバと水を垂れ流していた白い像が今ではその水も止まってしまい白いビーナスちゃんはカラスの糞でギトギトになっちゃってます。(エントランスは天然芝が生えていたはずなのですが今では雑草が無尽蔵に咲き乱れてます)
土地面積もあるし建物もそこそこ積算が出るので融資自体は問題ないと思いますが、無駄な作りをしているので利回りは10%ギリギリです。。ちゃんと容積消化してうまく部屋割り出来てれば表面で14%くらいはいくはずなのに・・・・惜しい物件です。。
当時、こういう物件がちょくちょく任売に出てたんです。
さて、売主さんはこの5LDKに一人住まい。。
なんでこんな広い部屋に一人で住んでるかなんて理由はその時はわからなかったのですがこの理由があとで大きな波紋を呼ぶなんて心にも思っていませんでした。。
売買交渉には売主さんも出てきてくれて弁護士さんの事務所で比較的スムーズに進みました。
任売の時って案外売主さんと弁護士さんとの呼吸がうまく合わずにスムーズに進むことって少ないのでこの時は「これなら2か月もあれば終わっちゃうかなー」と余裕ぶっこいてましたが、2回、3回と打ち合わせを重ねているうちに段々と売主さんが欠席するようになりました。
弁護士さんに聞くと「なんか急ぎの用事があるみたいだよ」って話だったので気にしていませんでしたがそのうちにこの弁護士さんも忙しいだのなんだのって言って会い辛くなってきました。。
約束してもドタキャンしやがりますので弁護士事務所に張り付いて先生を捕獲するなんて荒業を駆使して捕まえて話を聞くと、、どうも売主さんが売るのをやめたいようなことを言ってるらしいということが判明しました。
「え?でもそれじゃいずれ競売に掛けられちゃうからダメなんじゃん」と弁護士さんに聞いたのですが
「うーん、、それはそうなんだけど、どういうわけか売主さん、売りたくないって言ってんだよね」って話。。。
こういう時我々不動産屋が考えるのは、あれです。。
他にもっと高い金額で買いたいってお客さんが現れたんじゃないかって事です。。
しかし、今回はこの弁護士さんが話を取りまとめてます。ならこの弁護士さんが成り行きはすべて把握してるはず。。
ワタクシ、「ん?もしかしてこの弁護士が変な絵を描いてんのか?」と不信感が募ってきました。。。
しかし、どうもそうでもなく単に売主さんがちょっと変だってことが段々判明してきました。。
どうもこの売主さん。
精神的に病んでるようです。
何回か売主さんに手紙を書いて情に訴える作戦と展開したのですがこの手紙(えぇ、、そりゃもう「貴方の利益を考えて真剣に考えた末のお手紙ですなんてことが書かれてますw)、、売主さんのポストにずっと入ったままです。。(何回も現地に行ったのですがポストを開けた形跡がありません)
しかし新聞だけは毎日抜かれてます。
留守がちなのかと思ったら夜は部屋の電気がずっと付いていて朝になると消えてます。。
やっぱり住んでますよね。。これ。。
話をすればなんとかなるかもと思って何度もインターホンを鳴らすのですが、、なんか居留守を使われている雰囲気。。。(うーん、わけわからんです)
仕方がないので今回も売主さんの寝込みを襲う戦術に出ました。
と言ってもそれじゃ強盗みたいなので朝駆け戦術です。新聞を取り混む時間帯に張り込んでその時に襲いますw。(地上げの時もこの戦法を多用します)
その時は来ました。。
売主さんがスーッと部屋から出てきたのを確認して身柄を拘束(拘束っていても「おはようございます」って感じのライトな感じでですよw)。
売主さん相当びっくりしていましたが、話だけでもと言うことになり売主さんの部屋に行くことになりました。
部屋に着いてびっくりしたのはワタクシです。。。
部屋にはいくつのも小動物用のゲージがうず高く積まれていました。。。。
ここでワタクシの一番苦手なものをお知らせしますがワタクシが一番苦手なものは・・・
爬虫類です。。。(ヘビが舌をちょろっと出しただけで軽く死ねますw)
しかしそのおびただしいゲージの住人は爬虫類ではなさそうです。。(爬虫類だったらワタクシ、この部屋にはいられません)
ギシッ、、ギシッ ざわざわ・・ギシッ、、ギシッ・・・
ギシッ、、ギシッっていう音からするとこれは昆虫です。。。
(ガキの頃家で飼ってたクワガタがカゴから抜け出す音とそっくりです)
100個くらいあるゲージすべてに入っていたのは表題の通りぜーんぶカブトムシですw。

ニホンオオカブトムシ
この売主さん。。
カブトムシのコレクターらしいです。
それは世界中からカブトムシを収集しまくっているんでしょう。。
ワタクシが今までに見たことの無いようなものすごくデカいカブトムシや変な色をしたカブトムシ、、
もうここはカブトムシアイランドです。。
よくよく売主さんから事情を聞きましたが、カブトムシの世話が精いっぱいで物件の売却どころの話じゃないんだよ。。と。
んー・・。。現実はそういう問題じゃないんです。。。
このままだと1年くらいで物件は他人の手に渡りその後、ここにリースバックで住めればいいですがそうじゃなければ立ち退きです。。カブトムシが大切なら今のうちに行動を起こさないとダメですよと言ってみました。。
しかし、ワタクシが業者です。売主さんも「業者のお前が適当に都合のいい話を並べてるだけなんじゃん」って反応なので話が先に進みません。。。
「あ、そこのゲージ取ってくれる?」
なんかワタクシも飼育員Bとしてこき使われだしました。。。こりゃいけません、、話を進めなくては。。。
ここは相手の立場になって親身に説き伏せます。(説き伏せるってのがあまり適切じゃない気もしますがw)
なんで今売りたくないかって?
そりゃ、、あれです。
カブトムシによっては越年出来ないのもいるらしく今の時期に環境が変わってしまうと死んでしまうらしいんです。。
「環境を変えるわけにはいかないから競売に掛けられて強制執行になるまでここで頑張る」と決意を固めちゃってました。とほほほほ。。
ワタクシ、よっぽど「カブトムシだけが人生じゃないですよ」と説くつもりでしたがこの方にそんなこと言ったらヘラクレスオオカブトの幼虫とか投げつけられそうです。。
グロ注意!!!(お食事中の方はご遠慮ください)

幼虫でこんな大きさです。。。ひー
その後、何回も説得に行きましたが一度閉じた心の扉はそう簡単には開いちゃくれません。。
それから約一年後、競売で落札された本物件。。。。
落札価格はと言うと
36000万円。。。(あーあ、、)
5億で売ってれば借金清算して手残りもあったのにカブトムシですべてを失ってしまいました。
しかしこれもこの方のロマンです。
ワタクシには到底考えられませんがこの方にとってはこれが最善策だったんじゃないかと。。
落札後、気になって物件を見に行きましたが結局退去の道を選んだそうです。(仕事していませんから家賃払えませんって話だったらしいです)
あれから3年以上経ちましたがあの物件は今どうなっているんでしょう。。
今度謄本あげてみようかな。。。と。。

この幼虫、、一瞬野球のボールに見えたんじゃんw